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アメリカ産婦人科学会【ドゥーラとのコラボレーションについての声明】

2 時間前
読了時間: 7分

 

アメリカ産婦人科学会のドゥーラとのコラボレーションに関する声明
アメリカ産婦人科学会のドゥーラとのコラボレーションに関する声明

2026年8月、アメリカ産婦人科学会(ACOG: American College of Obstetricians and Gynecologists)が産科医は出産現場でドゥーラとパートナーとしてコラボレーションすることを推奨すると発表しました。

 

はじめに

 

この発表の内容についてはDONA InternationalDoula Trainings InternationalThe National Black Doulas Associationの3つのドゥーラ認定団体が承認しています。

 さらに、この発表を作成するのにもドゥーラが関わっています。作成メンバーとしてACOGの「産科婦人科ケアにおける公平性の向上委員会Committee on Advancing Equity in Obstetric and Gynecologic Health Care」の他に、3名のドゥーラの名前が記載されています(一人はDONAインターナショナルの代表)。つまり、産科医だけの意見ではなく、ドゥーラの意見も反映されているということです。

 

具体的な推奨事項


 この発表のまとめとして、次の5つを推奨しています:

1.産婦人科医はドゥーラの役割やメリットについて知っておくこと

2.産婦人科医は患者と産む環境がより良くなるように相乗的(synergistic)で互いが尊敬しあえるような出産チームを作り、そのチームにはドゥーラを含むこと

3.産婦人科医は患者にドゥーラの様々な役割を伝え、患者がドゥーラを希望する場合に備えて自分の地域やコミュニティのドゥーラについて情報を得ておくこと

4.産婦人科医はドゥーラサポートが様々な形態やリソースから得られることについて情報を得ておくこと*

5.産婦人科医は産婦人科ケアにおいてのドゥーラとのパートナーシップやドゥーラの役割についての研究を推奨し協力すること

 

*訳注:表1に示すように出産サポートだけでなく人生の様々なシーンに合わせた多様なドゥーラの形態があること。またリソースとしては民間のドゥーラだけでなく、病院専属のドゥーラ、医療保険適用のドゥーラなど、患者の社会的・経済的ニーズにあったドゥーラが存在することもあることの意味。

 

ドゥーラについて


 ドゥーラという言葉は本来ギリシャ語で「仕える者」という意味で、伝統的に出産時にサポートをする地域社会で経験のある女性たちを指していましたが、現代では出産の医療化や家族・家庭の変化などのためにそのような地域や家族による非医療的なサポートが叶わなくなってきました。現在ではドゥーラは研修を受けて精神的、身体的なサポートと知識を提供する専門家という意味で使われています。ドゥーラになるための教育や方法は多様であり、同じようなサポートを提供しても必ずしもドゥーラと名乗らない人もいます。現代社会の様々なニーズに合わせて活躍する多様なドゥーラの種類を表で示します。

表1.ドゥーラの種類と提供されるケアの例

ドゥーラの種類

提供されるサポート

出産(Birth)

妊娠中は知識、リソースやガイダンスを提供して産む人とそのパートナーや家族が陣痛と出産に備えるサポート;陣痛・出産、産後直後には安心や精神的サポート;産後についての知識や振り返り

産後(Postpartum)

産んだ人や家族と新生児の産後サポート、例えば新生児の世話、母乳育児、精神的な安定、母体の医療的必要性など;家族が休息を取れるよう家事や食事の計画

全般的(Full-spectrum)

妊娠前、妊娠期、出産と産後の全期間を通じたサポート;中絶、流産や死産を含む場合もある

妊活と妊娠(Fertility and pregnancy)

妊活中に不妊についてのストレスや精神的な影響についての知識や精神的なサポート;生殖内分泌治療や不妊治療の前後での補足説明や振り返り

家族の変化期(Family Transition:きょうだいの産まれる時、養子を迎える時)

上の子の年齢に応じた新しい家族を迎える際の適応の仕方の知識;養子を迎える際の準備

中絶(Abortion)

経口又は手術による中絶の前後・術中の精神的サポート;喪失サポートにつながることもある

喪失及び周産期ロス(Bereavement and perinatal loss)

中絶、流産、死産の際のサポート

死期及び終末期(Death and end-of-life)

死に直面する本人や家族に対するグリーフや死のプロセスについての精神的、宗教的、現実的なサポート

月経と思春期の健康、閉経とプレ更年期(Menstruation and adolescence health, Menopause and perimenopause)

生殖のライフサイクルや解剖学、生理用品についての知識;性教育(避妊具の使い方、性感染症など);閉経の症状についての知識、サポート

 

 ドゥーラと名乗るには必ずしも公的な研修を受けている必要はなく、長年の経験等があればドゥーラとしてのサポートが十分提供できます。更に、現在発表されている研究データは、ほとんどが出産ドゥーラに関する研究であり、その他の種類のドゥーラやドゥーラサポートについてはあまり研究がありません。

 公的な資格や研修が統一されていないといった状態ですが、ドゥーラの質を担保するために、研修に含まれる一般的な内容の一覧も示されています。


出産ドゥーラの研修内容
出産ドゥーラの研修内容


ドゥーラと医療者のコミュニケーション


 ドゥーラの役割は、患者のアドボケート(養護者)かつ患者が自身の言いたいことを口にできる(セルフ・アドボカシー)の応援です。そこを医療者が理解していないと、ドゥーラが患者のために発言したりするときに医療者が患者とのコミュニケーション能力を誤解したり、患者との好意的な治療関係(Therapeutic Relationship)の構築に影響が出たりします。時にはこのようなドゥーラの役割により、医療者との間でパワーダイナミクス(権力の配分関係)を増長することがあるかもしれませんが、そうではなく、逆にこれを機会としてドゥーラと医療者がお互いから学びあい、協調することで、周産期のアウトカムを向上させることができます。

 現状ではドゥーラの認定は統一されておらず、ACOGとしても特定のドゥーラ認定団体を承認することはしていないので、ドゥーラに対して医療者から苦情がある場合、どこに申し立てするかをはっきりしておくのが望ましいし、ドゥーラが医療者に対して苦情がある場合もしかりで、病院のシステムにのっとって苦情を申し立てられるなど明確なで双方向な筋道があることが望まれます。

 周産期のケアにおけるドゥーラの全人的(Holistic)なアプローチは、医療者の生物医学的なアプローチを補完するものです。母子衛生のアウトカムが悪化し、母子衛生のシステムに対する圧力が増す中で、ドゥーラと医療者が協力するケアモデルが必要です。ドゥーラと医療者がパートナーシップを組むと、コミュニケーション、患者中心のケア、医療チームへの信頼度、および出産後の患者の継続的なケアが向上することが分かっています。多くの研究で出産ドゥーラの利点が証明されているのを基に、米国のほぼ半数の州がドゥーラの低所得者用医療保険適用を認めるようになりました。このような時勢において、産婦人科としての特権を活かし、ドゥーラとのコラボレーションを促進すべきです。

 

最後に


 ドゥーラが医療ケアチームの一員であるとき、患者の経験とアウトカムが向上することが証明されています。ドゥーラによるサポートは、エビデンスに基づくアウトカムと医療システム全体のコスト削減につながります。ドゥーラと医療者の関係に壁がある場合の対策としては、医療側のドゥーラについての研修や方針の見直しが考えられます。同時に、コラボレーション・コミュニケーション・説明責任を促すような職場の空気やアプローチも重要です。最後に、ヘルスケアシステムの不公平性を検証するためにはドゥーラの利点を示すデータを蓄積し、患者の報告によるアウトカム、コラボレーションの有効的な方法が含まれているべきです。

 

訳者から:言葉遣いについて


 以上は発表の主な訳です。ドゥーラシップジャパンでは、多様な産み方、家族の形、自認の形を認めて、出産する人のことを「産む人」と呼んでいます。この発表は産婦人科学会によるものなので、産む人のことを「患者」と呼んでいます。発表の内容をできるだけ正確にお伝えするためにこのニューズレターでは「患者」という言葉をそのまま使用しました。この記事では、声明の中から「多様なドゥーラの種類」と「一般的なドゥーラの研修内容」を中心にドゥーラシップジャパンが独自に訳したものを掲載しています。※ACOGの公式な日本語訳ではありません。

次の記事では、5つの推奨事項について詳しくご紹介します。



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